MTシステム問答・入門編①
シンプルで確実・・・そんなうまい話なら、なぜ今まで誰も気付かなかったんだろう? 世界中の研究者が知恵を絞った方法があるんじゃないのか? 「パターン認識理論」とか「人工知能」とか言っていたと思う。それなのに、誰がそんなうまい方法を考えついたんだい?
MTシステムを考えたのは、田口玄一博士です。
1997年に「米国自動車殿堂」に選ばれた方です。
「自動車殿堂」って何?
アメリカには野球殿堂がありますけど、その自動車版です。
自動車技術の発展に大きな足跡を残した方々を顕彰することを目的としており、
日本人としては本田宗一郎氏、豊田英二氏も選ばれています。
田口博士と自動車とはどんな関係があるんだ?
「良い製品」とは期待したとおりの働きをする製品ですね。期待外れがありません。 つまり、働きにばらつきが少ないということです。田口博士はそのための体系を確立しました。 そして、「パターンの処理もばらつきの処理である点で共通」であることを、博士はずっと考えておられました。
博士によるパターンの研究は1970年代からですが、広く知られるようになったのは1990年代になってからです。
パターンの処理がばらつきの処理である、ということが分らない。
手書き数字を自動的に読取る機械を作るとします。人間であれば、たとえば、数字の"5"という文字を簡単に読むことができます。誰が書いた字でも。
それは、"5"という文字が、ある"ばらつきの範囲内"の形やバランスを持っているからと考えることができます。
工場の稼動について考えると、うまく稼動しているときは温度や圧力や流量などが、あるばらつきの範囲内やバランスの範囲内にあるはずです。流量のゲートを開けたら、ちゃんと流量も増えるとか、その辺りの関係が整然としているのが正常な稼動です。そのほか、機械の音が一定の高さにあるなどでも、稼動状態の判断材料になります。 そういうことは、ベテラン技術者なら感覚的に分っています。
数字の5が、あるばらつきの範囲内ということは、何となく理解できる。無茶苦茶に書いたら5にならないものね。しかし、文字を判読することぐらいは人間にとってはごく当たり前のことだ。なんでコンピュータは不得意なんだ?
人間は、小さい頃から5という文字を自分で書いたり、他人の書いたものを見て覚えてきました。何万回書いたか分らないくらいですね。だから、自然と頭の中に5という文字の形がしみこんでいるのです。ばらつきも含めて。
しみこんでいるのは分るけど、人間の脳みそにしみこんでいることをどうやってコンピュータにさせるんだ?
そこで田口博士は考えたのです。「5という文字には5であるが故の均質性がある」と。