MTシステムと品質工学

MTシステムは品質工学(タグチメソッド)の創設者である、田口玄一博士により提案されました。以下に、MTシステムと品質工学についてご紹介します。

田口玄一博士はものづくりに関する独自の理論・体系(品質工学)を生み出した方です。その功績は、第二次大戦後の日本の復興に大きく貢献しただけではなく、むしろ米国の製造業にインパクトを与えたことで有名です。特に米国自動車産業への貢献は多大であり、1997年に米国自動車殿堂入りをされました。日本人として豊田英二、本田宗一郎に次ぐ3人目のことです。
また、1954年には「国力の源は学問」との考えで世界中の研究者に協力を求めていたインドに招かれました。招いたのは、インド統計研究所を創設した統計学者P.C.Mahalanobis博士です。マハラノビス距離で有名な方です。以来20年にわたる親交を持ちました。

ところで、ロシアの文豪トルストイの小説アンナ・カレーニナの以下の一節はよく知られています。

幸福な家庭は一様に幸福だが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である

田口博士は、Mahalanobis博士の理論を品質工学に活用したいとの思いがありました。その思いが、トルストイの小説と結びつき、MTシステム(MTS)が生まれたのです。幸福な家庭が良品や正常状態に該当し、不幸な家庭が不具合や異常に該当するということです。「それぞれに不幸」の言葉のとおり、ものづくりで起こる不具合はさまざまで、中には突然現れる未知の不具合もあります。正常だけから得られる情報を基準とし、基準から離れているかどうかで異常を見い出そうというわけです。離れ具合を数値化するために、マハラノビス距離が用いられます。

品質工学は頑健性(ロバスト)や安定性を追求する手法体系です。言い換えるなら、安定=幸福なものづくりを実現する体系と言えます。

 

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