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MTシステムのことを知りたい

<MTシステムの目的>

 MTシステムは、パターン認識や予測のための手法です。パターンの相違や程度を適切に数量化するために、人工知能や回帰分析などとは異なる考え方や数理を使用しています。“ばらつき”の性質を巧みに捉えた処理技術と言うことができます。品質工学(タグチメソッド)から発祥した技術ならではの特質や使い勝手の良さを持っています。
 人間判断の代行だけではなく、より高精度で安定した結果を得ることができます。


<MTシステムの応用分野>

 製造ライン監視、部品検査など、ものづくりの分野で応用され多くの実績を上げています。このほか医療分野や経済分野、また最近では環境・エネルギーや農業分野へのMTシステムの応用も広がっています。

<MTシステムの考え方の特徴と基礎となる数理>

 まずばらつき方が一様で均質な状態を基準として設定し、この基準からのパターン相違を数量化します。基準とする状態を“単位空間”と呼びます。こうした基準の取り方は「幸福な家庭は一様だが、不幸な家庭はそれぞれに不幸」という文学(トルストイのアンナ・カレーニナ)の一節に着想を得ています。一般的に正常な状態や良品が一様な状態として定義されます。
 そして、一様な状態からの相違度を測るべき計測項目を決めます。項目は温度や圧力、流量あるいは物性値などです。音や振動を計測する場合もあります。
 これら複数の計測項目を利用して、対象の基準状態からのパターンの一致/相違をマハラノビス距離として計算します。マハラノビス距離は一般に4.0以下であれば単位空間の仲間、それ以上であれば仲間とは言えないと判断されます。マハラノビス距離は、項目間の相関を考慮して求める数理で、単位空間の考え方とも合せて、MTシステムは人間の感性ともよく一致します。
単位空間画像


<MTシステムの競合技術>

 人工知能と呼ばれる技術−たとえばニューラルネットワークやベイジアンネットワーク−、主成分分析など統計数理を用いた技術などが、MTシステムと同じ目的で利用されることがあります。予測問題では、重回帰分析などと比較されることもあります。最近では、MTシステムをベンチマークとして、新たな技術についての性能を訴える論文なども見かけます。

<MTシステムの特徴と利点>

 MTシステムは人間の判定とよく一致します。均質な状態を基準とする考え方が、実際の現場(熟練者)の感覚によく適合しているためと言えます。マハラノビス距離が大きいということは、“正常としては見たことがない状態”を意味しますので、多くの場合は異常であることになります。基準とするのは正常という一様な状態ですから、未知の異常への検出感度も持っています。
 また処理時間が速いという特徴があります。これは、計算が比較的簡素であることによります。MTシステムは原因診断機能があり、異常の場合の対策を即座に講ずることもできます。


<MTシステムのいくつかの数理群>

 MTシステムと呼ばれる体系には、数種類の数理があります。また、もともと田口玄一博士がMTシステムを提案した際には、パターンの特徴化技術もセットになっていました。1995年当時は、単位空間の考えに基づきマハラノビス距離を求めることと、特徴化技術とがセットになってMTシステムまたはMTSと呼ばれていました。
 その後1996年ころから、田口博士はさまざまな認識・予測の数理を提案され、それらの総称をMTシステムと呼ぶことになりました。

 以下に現場でよく利用される数理をご紹介します.MTシステムの数理は目的により以下の2つに分けることができます。
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数理によっては両者を併せ持つこともあります。

パターンの相違を認識する手法

 一様な単位空間を定義し、そこからのパターンの相違を距離として求める手法です。
MTシステムの中では MT法、RT法、標準化誤圧法 があります。


MT法(Mahalanobis-Taguchi System)

 一様で均質な状態を単位空間と定義し、対象とする状態の単位空間からの距離をマハラノビス距離として求める手法です。当初はこの方法は MTS と呼称されていました。距離の計算だけではなく、パターン認識性能の評価尺度にSN比(Signal to Noise ratio)を導入し、異常時の原因診断方法も提示されています。
 イプシロンロケットの自律監視にも採用された手法で、計算のためのメモリ容量が少なく、計算が高速、なおかつパターン相違に対する十分な感度を持つという特徴が評価されています。

 なお、アングルトライのMTシステムは、マハラノビス距離実用化の課題であった多重共線性問題を独自の方法でクリアし、処理速度も米国の研究者が “Amazing!” と表現したほどの速度を有しています。そして、計算数理の工夫と高度なプログラミング技術により高速処理を実現しています。


RT法(Recognition Taguchi System)

 主に画像認識のために提案された手法で、「標準SN比」という品質工学の数理を適用します。画像データは多くの画素の集合ですので、そのまま変数として扱うと数千〜数万項目を扱う問題になります。そこで、標準SN比の考えを適用してわずか2項目に集約してパターン相違を求めます。
 集約された項目が2ですので、一つの単位空間は2次元で済みます。そのため、文字認識などのように単位空間とすべき対象が多い場合に効果を発揮します。
 ただし留意すべきこととして「項目は全て次元が同一」でなければなりません。異なる単位や次元の値(たとえば温度と流量)をそのまま利用すると、結果に意味が失われます。その場合は、なんらかの無次元化処理が必要です。


標準化誤圧法(Standard Variance method)

 MT法の計算数理から相関の要素をすっぽりと除いた手法です。単位データのサンプル数が項目数より少なくても、また多重共線性があっても計算が可能です。数理が簡単ですから、表計算ソフトでも試してみることができます。
 ただ、相関の要素が重要な対象には向いていません。たとえば、制御量と被制御量とのズレなどに関しては感度がありません。

 なお、標準化誤圧法と呼ばれる数理には2種類があります。一つは2000年に田口博士が“標準化と品質管理”誌上で提示されたオリジナルの方法で、もうひとつは2010年に矢野らにより提案された方法です。アングルトライが提供しているのは「田口のオリジナルの方法」です。

出力値を予測・推定する手法

 明日の降水量や部品混合割合による材料強度予測など、目的とする値すなわち出力値を予測・推定する手法です。一般には重回帰分析と同じ目的で利用されます。
 MTシステムの中では T法(1)、MSR法 があります。


T法(1) (T Method-1)

 各項目ごとの出力値に対する説明性(回帰)を調べ、それを総合した予測式を生成します。総合するために、品質工学で用いるSN比や感度を利用します。
 1対1の説明性を基本とし、相関は利用しません。そのため、基本となるデータのサンプル数が項目数より小さかったり、多重共線性があったりしても計算を実行します(重回帰分析では計算不能となります)。考え方や計算方法が簡素ですが、安定した予測精度を得ることができます。  
 推定精度はデータの性質により、重回帰分析と比較して優れている場合、劣る場合がありますので、両者で計算して良い方を利用することがよいと考えられます。

 またT方(1)を用いることにより、日々蓄積されるデータから品質工学における直交実験と同等の結果を得ることもできます。新たな応用分野として注目されています。


MSR法(Multiple Single Regression)

 T法(1)を改良し、T法(1)と重回帰分析の良さを併せ持つ予測式を生成します。基本となるデータのサンプル数が項目数より小さかったり、多重共線性があったりしても計算を実行します。実際に多くのデータで優れた精度を実現します。

<特徴抽出技術について>

 1995年の品質工学会誌にMTシステムが提案されたとき、田口玄一博士は特徴抽出技術も同時に提案し、その総称をMTシステムと呼ぶことになっていました。その後、特徴に関する技術を含むかどうかは議論されなくなりました.田口博士は、むしろ予測や診断の数理に心血を注ぐことにされたためかもしれません。
 しかし、1995年に提案された特徴抽出技術は汎用性に優れ、その後時系列波形や振動波形、スペクトル波形などへの適用が進められています。


<「MTシステム」 名前の由来>

 インドの数学者 P.C. Mahalanobis 博士のと、日本の田口玄一博士のとからMTシステムと命名されました。命名者は田口博士です。両博士は20年間近い親交がありました。
 マハラノビス距離は1936年に発表された数理で、インドで発見される動物の骨を効果的に分類するために提案されました。論文の最初のページを以下に掲載します。
 田口博士は、この数理を生産性の向上に使えるのではないかと思考を巡らしていたそうです。そして、トルストイのアンナ・カレーニナの一節である、“幸福な家庭は一様に幸福だが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である”にヒントを得て、一様な状態に基づくマハラノビス距離の適用を着想したそうです。田口博士のご自宅には、そのとき頭をめぐらせた跡が残っています。

Mahalanobis博士による論文画像

さらに詳しいことは、「入門MTシステム」(日科技連出版社)などをご参照ください。

また、超入門資料として以下も用意しました。ぜひご参照ください。


かんたん解説  なんのことか分からんぞ問答集  少し分ってきたぞ問答集  マハラノビス距離も分ったぞ問答集

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